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夢のアト - 3

「今、達樹が何してるか、知ってる?」
里緒の背筋に電気が走る。

久しく耳にすることもなかった名前。
彼は直人と同じバンドで、ボーカルを務めていた。
友達以上から、顔見知り未満に落ちた関係。
意図的に情報が入ってくることを拒んだ。結果、今の今まで、存在自体が消えていた。

「いえ、知らないです。」
平常心を装おうとして、両の掌に汗が滲む。

「あいつ等、メジャーデビューまで行ったらしいんだけど、最近解散したんだって。」
「・・・そうですか。」
次の言葉が続かず、俯く。今の里緒にとって、大して興味の沸かない話題。

「そういえば、直さんは今もドラムを叩いているんですか?」
場を取り繕うために、率直な疑問を投げる。

「今は全然。ドラムもバンドも、大学卒業と同時に辞めたんだ。」
『未練』の二文字も感じさせない、さらりとした口調。
そして、里緒にとっては、望まない答えだった。

「大学卒業って、私が行かなくなってからすぐじゃないですか!一体どうして。」
言葉に詰まる。
当時、ワンマンをするには程遠い状態ではあったが、バンド内部の関係は良好だった。
少なくとも、里緒の目にはそう見えていた。

「その前の年の春には就職先が決まっていたし、加入当時からバンドは大学卒業までって決めてたからね。」
それから直人はコーヒーを一口だけ飲み込むと、一度だけ深く息を吸った。

「辞めるときはもめたよ。特に達樹とはね。彼は音楽で自分の存在を世間に認めさせようとしてたから。その歯車として、俺のドラムが必要だったみたい。」
「認めさせる?」
妙な言い回し。その真意を飲み込めず、過敏に反応する。

「達樹の理想は、自分が作る音楽が一番だった。どんな名曲を前にしても、屁理屈を並べて認めなかった。」

嫌な記憶が蘇る。
その日、里緒は達樹との待ち合わせの間、歌詞が良いと評判の曲を聴いていた。
遅れてきた達樹が珍しく興味を示してきたため、仕方なくイヤホンを貸した。
すると、1フレーズも聴かないうちに、イヤホンを投げ返し、里緒に罵倒を浴びせた。
演奏技術が未熟だの、曲に抑揚がないだの、自分の方がもっと名曲にできるだの。
当時は唖然とするしかなかった。しかし、今になってみると、直人の言う通りで、思わず笑いがこみ上げてくる。

「あいつは子供みたいにごねる。それはレコード会社と契約解除された今も変わらないって。」
直人の目は、まるで達樹という子供の面倒を見てきた親のように優しかった。

「最近、彼に会ったんですか?」
「達樹には辞めてから全然会ってないよ。この間、ちょうど聡史に会ったんだ。」

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