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夢のアト - 7

ふいに直人は腕時計に目を落とす。

「もう少し話していたいんだけど、そろそろ次の客先に行く時間だ。つまらない話に付き合ってもらって悪かったね。コーヒーは僕のおごりだから、ゆっくりしていって。」

「こちらこそ根掘り葉掘り聴いてしまってすみません。」

準備を始める直人にあわせ、里緒も席を立つ。
続けてバッグの奥底に隠れてしまった財布を探す。

やっとの思いで財布を取り出したとき、直人は二人分のお会計を済ませ、外に出ようとしていた。
慌てて追いかける。

「やっぱりお代。」

「いいよ。誘ったの、俺だし。」

「・・・ごちそうさまです。」
深々と頭を下げる。

顔を上げたとき、優しく、温かな眼が飛び込む。

「それじゃ、転職活動頑張ってね。」

直人が進行方向を決める一歩を踏み出したその時、里緒の記憶の中にいた、直人の姿と重なった。

「煙草、辞められたんですね?」

「え?まだ1ヶ月も経ってないけどね。」
突然のことに直人は驚き、里緒を凝視する。

「これからまた仕事なのに、呼び止めてしまってごめんなさい。」

「辞める理由ができたからね。」
素っ気ない答えに、里緒は違和感を覚え、怪訝な顔をする。
一瞬、直人が照れ隠しをしているように見えたからである。

「半年前に結婚したんだ。それに、この間、子供ができたことがわかったからね。だから辞めることにしたんだ。」

「そうだったんですか!おめでとうございます。じゃあ、お相手は?」

無言で口元を綻ばせる直人を見て、里緒は自分のことのように喜ぶ。

「落ち着いたら、家に呼ぶよ。アイツも里緒ちゃんなら喜んで歓迎してくれるだろうし。」

再び、直人は時計の針を確認する。

「それじゃ。客先に遅刻するから。連絡先は変わってないから、もしよかったらメールして。」
それだけ言い残すと、足早に去っていった。

残された里緒は、すぐさま駅へと続く道を目視確認する。
それから、背筋を伸ばし、確かな足取りで一歩ずつ踏み出した。

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