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カイラク - 1


「動機?半径30cmの外で起こっている平和を壊したかったから。」


飛散するガラス。
落下する欠片。
悲鳴を上げる主婦。
泣き叫ぶ子供。

平日白昼、雑貨店のガラス食器売場を襲撃。

右手には現地調達の綿棒。
別の売場からせしめてきた。

陳列されたワイングラス。
胸元ほどの高さに、隙間なく並べられている。
店員の並々ならぬ努力の賜物か、奥から手にとって見定める客がいないだけか。
店の事情なんて、今はどうでもよい。

幸い、周囲に人はいない。

手前の通路をバッターボックスに見立てる。
両足を肩幅程に広げ、綿棒を両手できつく握り締める。
ゆっくりと深呼吸した後、大きく一振り。

棒先がグラスに触れる。
あるものは脚が折れ、隣のグラスを巻き添えにして倒れる。
芸術からずっとかけ離れたドミノ倒しが至る所で発生する。
また、あるものは、十分に凶器となり得る鋭利な角を現す。
仮にワインを注げたとしても、口を付けることはできない。

他にも、細かく砕かれた小さな欠片が扇状に軌跡を描く。
蛍光灯に反射して煌く様に、思わず見とれる。

同時に、幾重にも連なった不協和音が店中に響く。
周囲の客が異常に気づき、叫び声を混ぜる。

日常が壊れた。
平穏が失われた。

全て、自分の両腕が変えた。


思い描いていた通りの展開。
自然と口元が綻ぶ。


突然の出来事に慌てふためく客。
観察しているだけで快感すら覚える。


騒ぎを聞きつけた店員が、すぐさまこちらに走ってきた。


反射的に足が動く。
今でも認めたくないが、「悪いことをしている」という本能が働いたのだろう。


手にしていた綿棒を足元に投げ捨て、その場を走り去った。

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