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カイラク - 3

駅までは一直線。
改札めがけて駆け抜ける。

イメージの中では俊足のつもりだった。
現実は、描いていたものとは似ても似つかない鈍足。
ダウンジャケットの裾が邪魔で、足を振り上げることができない。
それから、息切れから来る喉の痛み。
鉄の味さえしてくる。

やっとのことで駅構内に滑り込む。
しかし、息を整える暇はない。
予め購入していた帰り分の切符をポケットから取り出し、自動改札に突っ込もうとしたその時。

不意に、袖口を勢いよく引っ張られる。
切符を掴んだまま、後ろに倒れかける。

振り返ると、見知らぬ女性が立っていた。
口元に表情はなく、両目とも僕の瞳を追っている。

切符を持った右手の手首に熱を感じる。

急に全身が強張る。

彼女が僕の何を知っている?
今ならまだ間に合う。
そのためにはこの手を解かなくては。

何度も自分に言い聞かせる。
しかし、体が言うことを聞かない。
次第に焦りが生まれる。

その隙に、今度は黒い手帳をちらつかせた。
巡回中の私服警官。

シナリオには出てこなかった人物の乱入。
そんな展開、想定なんてしていない。
できるわけがない。

改札の向こうには、駅へと続く階段が見える。
あと数秒早く辿りつけていたら、今頃は悠々と電車のシートでくつろげたのに。

右腕を左右に揺らす。
血の通った枷がそれを邪魔する。
揺れを諌めるために、締め付けをきつくされる。

痛い。
跡ができていてもおかしくない。
明らかに自分よりも小柄なのに。力があるとは思えないのに。


遠くで発車を告げるベルが聞こえる。
時刻表通りなら、きっと、自分が乗る予定だったもの。

今の気分を例えると、一番乗りでゴールテープを切る直前で、監督に手をかけられたマラソン選手のよう。
大きく肩を落とし、項垂れ、その場に蹲る。

仮に、今、この女刑事の手を振りほどいて改札を抜けたとしても、狭い構内の中、追走をかわすのは至難の業。ここで終わりか。


後のことは覚えていない。
きっとあの女に引っ張られるようにして警察署に連れて行かれたのだろう。

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