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Tumbling Tube - 5

「あれ?兄貴、来てたんだ。」
玄関から声が聞こえる。
迎えるのは、瓜二つの顔を生まれながらに持った弟。

「一仕事終えたからね。警察にはもう呼ばれた?」
「今日ね。それにしてもあの女、中学のときから変わってないね。」

ジャケットを脱ぐのを見計らって、わずかながら厚みのある封筒を差し出す。

「報酬。っていうか、情報料。人数が人数だから、意外と儲かったよ。それにしても、あの女、かなりの人間から物を取り上げてたんだな。おまけに罪悪感もなさそうだったし。」

浩介は封筒を受け取り、中身を確認すると、バッグの奥底に隠した。
それから、リビングの片隅を指差す。

「そうそう、ウーズチューブって言ったっけ?あれ、見つけたよ。売ってるところがなかなかなくて、苦労したけど。」

棚の上では、中身のジェルが筒の下側に落ちきったウーズチューブが置かれていた。
その姿は、まるで佑一に気づかれることをひっそりと待っているかのようだった。

「あ、さんきゅ。お前から名前聞いてすっきりしたのはいいんだけどさ、あれ見てると、自分の半生そっくりなんだよなぁ。」

「どの辺が?」
発言の真意を問いかけながら、徐に筒をひっくり返す。

「これって、あと数秒あれば中身が落ちるってところで、ついつい逆向きにしちゃうだろ。」
流れ落ちる液体に視線を注ぎながら、言葉を続ける。

「それが似てるんだ。おかげでいつも最高と最低のラインを経験することなく今に至ってる。」

「そんなことない。そんなことは・・・。」
言葉に詰まる。
それを隠すように筒に手を伸ばしたが、触れる直前で手を引っ込める。息を飲み込んだまま、音に乗せて吐き出す瞬間を伺っている。
弟の様子などお構いなしに、兄の話は尚も続く。

「中学も難関を突破したところで退学。でも、転校先では濡れ衣を着せられた可哀そうな男として受け入れてくれた。事件のせいで体重が激減したことが功を奏したようだ。それから、高校で始めた体操部では、大会で入賞できる力を付けた。なのに、3年の大会直前で怪我して離脱。一生ものの怪我じゃなかったけど、大学への推薦話は消えた。そして卒業後は表舞台から姿を消す。で、今は、弟の情報収集能力と、自分の身体能力を活かして泥棒家業。」

「盗んでいるんじゃない。僕らは依頼されたものを取り返しているんだ。」
捲くし立てる兄を制止するように、浩介は語調を強めて訂正する。

佑一はしばし考え事をした後、弟が考えもしなかったことを言い出した。
「それも、そろそろ潮時。復讐まがいも終わった。今まではうまく行ってたけど、嫌な予感がする。最悪、二人とも監獄行きだな。」

佑一は筒に手を差し出すと、まだ半分も落ちていない筒を即座に反転させた。
勢いをつけて、机に置く。プラスチックと木がぶつかり、硬く高い音が部屋中に響く。

「だから、近いうちに鞍替えする。何かは決めてないけど、自分で転がすタイミングを決めて、良い方に導く。」
もう一度筒を握り締め、手の上で転がした後、勢いよく打ち付ける。

筒の中身では、半分に割れた液体が奇妙な曲線を描き、下側の筒へと流れ落ちている。

コメント

お久しぶりです。真人です。
今回もまた、複雑な人間模様の中展開される内容で、作品に惹き込まれました。
主人公の女性の絵美香さんは随分恨まれることをしてきたようですが、当の本人はそれを自覚していないようで……無意識のうちに人のものを奪って来てしまったのでしょうね。
その結果、自分が大切だと思っているものを盗まれて……。
でも西島さんは単なる私怨だけで絵美香さんのものを盗んだわけでもなさそうで……なんだか妙に気になる人間関係だなぁと思いました。
「僕が君を許す権利」
この言葉がとても印象に残りました。

今回も素晴らしい小説を読ませて頂き、ありがとございました。またこれからも新しい小説を楽しみにさせて頂きます。

真人さん

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

>当の本人はそれを自覚していないようで
>西島さんは単なる私怨だけで
この辺なのですが、当初は載せる予定だったのですが、書いていくうちに収拾がつかなくなり、削除してしまったんです。
(当初は絵美香がわざと盗んだわけではなかったり、西島(弟)とのちょっとした関係を混ぜようとしましたが、あたりきりな展開になってきたので、やめました。)
あと、当初はコメディ路線を狙いたかったのですが、推敲したら真面目な方向に(--;)
冒頭でおでこを小突くシーンは、その名残だったりします。

最後になりましたが、今年もよろしくお願いします。

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