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Tumbling Tube - 3

深夜にもかかわらず、警察が押しかけてきた。
盗難が確認されたのは、絵美香の部屋だけらしい。
この日は簡単な現場検証だけで、聴取は翌日に繰り越された。

「だから、西島佑一って名乗ってたんです。ここに写ってる、この男。」
入学式の集合写真に爪を叩きつけるように、何度も指差す。
写真の隅に写る、野暮ったい顔をした、肉付きの良い少年。
昨晩現れたのは、体操の選手かダンサーを髣髴させる絞った肉体に、精悍な顔つき。
写真の彼がそのまま成長した姿とは到底思えない。

だが、西島と絵美香の接点はこの写真一枚のみ。彼女が持ち得る、唯一の資料。
にもかかわらず、刑事の発言は、彼女の期待を裏切るものだった。

「最近話題の泥棒ね。本名と写真の情報提供はありがたいけれど、あまり期待できないよ。本名なら他の被害者の前でも名乗っているけれど、なかなか捕まらない。何せ、自分の欲とは関係ないところで動いているからね。おまけに予告もないから、出現場所に当たりもつけられない。」

「とにかく私は盗まれたものを返してほしいの。御託を並べる暇があったら、探し出してちょうだい。」
間髪入れずに一回りは上と思われる刑事を怒鳴りつけると、そのまま警察署を後にした。


数日後、絵美香の携帯電話に吉報が飛び込んできた。
「重要参考人ですか?今から行きます。」


軽やかな足取り。
胸を躍らせる。

しかし、通されたのは、取調室の様子を一望できる通路。
聞けば、「本人かどうかを確認してください。」とのこと。

本人の襟首を掴む暇も与えられない悔しさを顔に出す。
口や態度で訴えれば、追い返される。もどかしさを胸中に押し隠し、参考人が現れるのを待った。

数分後、担当の刑事に連れられた男が取調室に入る。
最初は俯き加減だったが、絵美香の存在に気づき、わざと目を合わせてくる。

毒や覇気のない瞳。それ以外は昨日と同じ。以外とすんなり見つかったんだ。


部屋に集まった一同が着席し、いよいよ取調べが始まる。
絵美香も固唾を飲んで、行方を見守る。

「刑事さん、いつもご苦労様。」
開口一番、全く予想していなかった一言が飛び込んできた。

「悪いけど、僕は佑一じゃない。」

絵美香に衝撃が走る。
周囲の刑事は、顔色一つ変えることなく、自分の役割をこなしている。
同じことが何度も繰り返されているのか、顔からは諦めの色さえ伺わせる。

「僕は双子の弟。浩介。僕のこと、覚えてる?」
今度はこちらに向かって手を振ってきた。すぐに刑事に窘められる。

「中学、僕は違うクラスだったから、知らないかもしれないなぁ。二卵性だったし、兄貴はすぐ辞めちゃったし。」
ここで刑事の顔を一瞥し、咎める気がないことを確認すると、再び舌を滑らせる。

「そうそう、兄貴、僕の知らないところで整形したみたい。それも僕をベースにさ。体は成長と共に絞られたってことにしておこうかな。おかげで事件が起こる度に呼ばれる。ある意味、僕も被害者だ。」

同じ顔。同じ話し方。あのときの男と違うとわかっていても、いらいらする。
しかし、その怒りを誰にもぶつけられないまま、彼女は再び警察署を後にした。

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