« Tumbling Tube - 3 | トップページ | Tumbling Tube - 1 »

Tumbling Tube - 2

茫然自失のまま、絵美香はベランダに出た。
周囲を見渡したところで泥棒の行方はわからない。
夜風が肌を刺激するおかげで、徐々に冷静さを取り戻す。同時に、事実を受け入れる余裕が生まれた。

諦めて部屋に戻り、もぬけの殻と化した部屋を一望する。

あの筒は、お土産として両親からもらったもの。
ただの置き物と見なされるわけにはいかない。


そういえば。
あの男が自ら名乗っていたことを思い出す。

ニシジマユウイチ。

一音一音声に出してみる。記憶の糸を手繰り寄せる。

中学入学当時。
わずか1ヶ月で退学した、右隣の席にいた男。
私の財布が消えた。
彼の机から見つかった。
結果、彼は学校を去ることとなった。

彼の退学が決まった後、同じクラスの別の男が、床に落ちていた財布を西島の机に突っ込んだことが発覚した。当時、騒ぎが大きくなりすぎて、なかなか言い出せなかったとのこと。その日の放課後、担任と一緒に謝罪をしに西島家を訪れたところ、門前払いを食らったと聞いた。
しかし、騒ぎを大きくした当の本人は、その間何もしていない。
私は悪くない。私は騒ぎに巻き込まれただけ。

終始被害者を貫いた。

それを今更、一体何のために目の前に現れたのか。
今わかっているのは泥棒の本名。それだけが唯一の希望。

絵美香はしばらく頭の中で様々な試行を繰り返した後、部屋に置かれている電話の子機に手を伸ばすと、「1」「1」「0」の順に、一つずつ確実にボタンを押した。

「もしもし、警察ですか?泥棒に入られました。」

コメント

コメントを書く